教育係の俺にミスを押し付けやがった。全くやる気のない教授の息子が、自分の失敗を全部俺のせいにして告げ口したんだ。教授は俺の話を聞こうともせず、息子の言葉だけを信じ込んで、「私の息子を侮辱するとはな。お前は首だ」と一方的に宣告してきた。俺は必死に説明したが、無駄だった。
俺の名前は鈴木孝介。33歳の心臓外科医だ。医者を目指したきっかけは小学生の頃、心臓病で入院した祖父を担当してくれた医師の姿だった。あの時、祖父は危険な状態で、医師は決して諦めず治療してくれた。祖父は奇跡的に回復し、退院の際に医師は「あなたが元気に退院することが一番嬉しい」と言ってくれた。その姿に感動して、俺は医者になることを決めたんだ。
それから必死に勉強し、大学に合格した時、祖父は喜んでくれた。今は憧れの医者として充実した日々を送っている。心臓外科を選んだのも、あの時の医師のようになりたかったからだ。仕事は確かに大変で、辛い時も多い。それでも患者が元気になっていく姿を見ると、医者になって良かったと心から思える。
俺は手先が器用で、手術の腕には自信がある。患者からも「傷が綺麗で診察も丁寧」と評判だ。廊下ですれ違う時に挨拶されることも多く、それが日々の苦労を報われてくれる。俺にとって医者はまさに天職だった。
ある日、新人医師の山本一がやってきた。同じ心臓外科で、教授の息子だという。俺が教育係になったが、初日から問題児だった。「僕は教授の息子だから優秀なんです」と自慢ばかりし、先輩や看護師にも上から目線。患者に対しても「そんなことも分からないんですか」と威圧的な態度を取る。俺が何度もフォローに入ったが、そのせいで診察はいつもより時間がかかった。
ある日、山本が担当した患者の診察でミスが発覚した。明らかに彼の手技ミスだったが、彼は俺のせいだと主張し、教授に告げ口したのだ。教授は息子の言葉を鵜呑みにし、俺の言い分を一切聞かない。俺は冷静に説明しようとしたが、教授は怒り狂うばかりだった。
「お前はもう首だ。荷物をまとめて出て行け」
その場で解雇が言い渡された。俺は呆然とした。ここまで必死にやってきたのに、たった一言で全てが終わったのか。だが、この時俺は気づいていなかった。この解雇が、実は大きな嘘を暴くきっかけになるとは。



