「田舎の下っぱは抹席だ。マナーも知らんのか。」 本社への転勤が決まり、開かれた歓迎会。そこで部長が私を指差し、こう見下してきた。 私は怒りを飲み込んで笑顔で言い返した。「じゃあ、あなたが抹席へどうぞ。」 「なぜ俺がそんな席に座らなきゃならん!」 部長が顔を真っ赤にして怒鳴る中、私は一つのデータを開いた。それは、部長が地方の予算を私腹に入れていた証拠だった。…

「田舎の下っぱは抹席だ。マナーも知らんのか。」 本社への転勤が決まり、開かれた歓迎会。そこで部長が私を指差し、こう見下してきた。 私は怒りを飲み込んで笑顔で言い返した。「じゃあ、あなたが抹席へどうぞ。」 「なぜ俺がそんな席に座らなきゃならん!」 部長が顔を真っ赤にして怒鳴る中、私は一つのデータを開いた。それは、部長が地方の予算を私腹に入れていた証拠だった。...

「田舎の下っぱは抹席だ。マナーも知らんのか。」
本社への転勤が決まり、開かれた俺の歓迎会。そこで本社の部長・杉村は初対面の俺に向かってそう言い放ち、ニヤニヤしながら指で床の席を指さした。
俺はその瞬間、長年九州の田舎の事業所で培ってきた我慢の限界を迎えた。
だが、すぐに怒りを封じ込めて笑顔で言い返した。「じゃあ、あなたが抹席へどうぞ。」
部長は一瞬固まったが、すぐに顔を真っ赤にして怒鳴った。「ふざけるな!なぜ俺が下っ端の席に座らなければならないんだ!」
「え?部長がおっしゃったんですよね。下っぱは抹席だと。」
俺の静かな一言に、周りの空気が凍りついた。九州の小さな事業所から本社に移ったばかりの俺だが、ここで舐められたままではやっていけない。

俺はもともと本社で採用され、三年後に九州の事業所へ異動してきた。田んぼに囲まれたのどかな場所で、最初は都会との違いに戸惑ったが、同僚たちが親切に車の買い方や美味しい店、絶景スポットまで教えてくれたおかげですぐに馴染めた。
そして、事業所に来てすぐ気づいたのは、本社ならシステム任せにしている作業をすべてアナログで行っている非効率さだった。
俺はすぐに上司へ提案し、システム導入が認められた。それから八年間、みんなが使えるようにサポートし続け、事業所の生産性は全社トップクラスまで伸びた。
だからこそ、転勤の発表をしたとき、事業所のみんなは「山本さんがいなくなるのは寂しい」と口々に言ってくれた。
そんな温かい仲間たちに見送られ、俺は本社へ戻ってきた。そして迎えたのが、この歓迎会だった。

杉村部長は俺たち地方出身者をずっと見下していたらしい。この歓迎会も、形式的に開いただけで、本心では「時間の無駄」だと思っているようだった。
俺が部長に「抹席」と言い返した後、会の空気は一変した。部長は顔を真っ赤にしたまま怒り狂い、周りの幹部たちも慌てふためくばかり。
俺はさらに続けた。「部長、あなたのその態度、私はずっと見てきました。本社の人たちが地方の事業所をどう見ているかよく分かります。」
部長は「何を言うか!」と怒鳴ったが、俺は動じなかった。
「私が昨年、本社に送った報告書を覚えていますか?あれに関する返答がついに届きました。」
その瞬間、部長の顔から血の気が引いた。
「な、何の話だ…?」
俺はスマホを取り出し、あるデータを表示した。それは、杉村部長が地方事業所の予算を自分の懐に入れていた証拠だった。
「この件、明日の朝一で役員会に提出します。部長、あなたの本社での立場、どうなりますかね?」
部長は机に両手をつき、額に汗を浮かべながら震えていた。周りの幹部たちも一斉に部長を見つめる。
「ちょ、ちょっと待て…話合いができるだろう?」
「話し合い?今さらですか?」
俺は冷たく笑った。この日のために、俺はあえて本社への転勤を了承したのだ。九州の事業所で八年間、同じように見下されながら働いてきた地方の社員たちのためにも、この男を許すわけにはいかない。
会場は静まり返り、部長の青ざめた顔がスナップショットのようにそこに映っていた。

翌朝、俺は約束通り役員会に証拠を提出した。杉村部長は横領の事実が明るみに出て、その場で役職を解かれ、退職に追い込まれた。
地方の事業所から本社に来た下っ端の俺に、部長は自分の立場を完全に失った。
そして、俺は本社で新たな部署に配属されることになった。新しい上司は杉村部長とは正反対で、地方の意見をしっかり聞いてくれる人物だった。
「山本君、君の報告書はいつも的確だね。また何か気づいたことがあれば、遠慮なく言ってくれ。」
その言葉に、俺は安堵した。ようやく、この会社も変わりつつあるのだ。
そして、九州の事業所から送られてきたメールには、こんな一文が添えられていた。
「山本さん、あなたの勇気のおかげで、私たち地方の社員も堂々と胸を張って働けます。」
俺はその文面を何度も読み返し、自然と笑みがこぼれた。
田舎の下っぱと呼ばれた男は、今日も大手を振って会社の廊下を歩く。

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