同窓会の会場で、エミルが突然こんな言葉を投げかけてきた。
「ところで君、今何してるの?まさか無職じゃないわよね。高卒の貧乏人は一体どんなところで働いてるのかしら?私、そういう底辺の情報に疎いから全然見当もつかないんだけど。」
耳を疑った。確かに、この場にいる中で俺は一番学歴が低いだろう。だが、そんなことを言われる筋合いはない。
俺は彼女の態度に腹が立ちつつも、平静を装ってこう返した。
「俺の就職先なんて聞かない方がいいよ。」
エミルは一瞬不思議そうな顔をしたが、この言葉の本当の意味をまだ知らない。
俺の名前は竹達は樹。今年45歳になる、どこにでもいる普通のおっさんだ。
両親は俺が保育園の頃に離婚し、親父に引き取られた。迷惑をかけないよう、気持ちを抑えて育った。
親父は中学卒業後、ずっと働き詰めだった。建築現場で泥だらけの作業着のまま帰ってくる姿は、俺にとって誰よりもかっこよかった。
そんな親父も去年、病気で亡くなった。寂しさは今も消えないが、親父の教えを胸に生きている。
高校は偏差値の高い公立校、四つ葉高校に合格した。
当時は野球部に所属し、甲子園を夢見て毎日汗を流した。だが、周りの部員たちは勉強優先で、本気で野球に打ち込んでいたのは俺だけだった。
結果的に甲子園には届かなかったが、今では良い思い出だ。
同窓会の招待状が届いたのは、そんな時だった。
懐かしい面子が揃う中、俺はエミルの言葉に昔のことを思い出していた。
当時、クラスの連中はほぼ全員が大学へ進学した。俺だけが違う道を選んだ。
学歴よりも大切なものを教えてくれたのは、親父だった。
エミルの態度は、昔と何も変わっていない。
彼女は「美しい」という理由だけで、男に断られた経験がないらしい。
四十路半ばの中年がそんな態度を取るのは、正直見苦しい。
俺は彼女に尋ねた。
「どうしてそんなに学歴や職業にこだわるんだ?」
その言葉に、エミルの表情がわずかに歪んだ。
だが、俺は知っている。俺の今の立場を話せば、彼女のその顔が一瞬で固まることを。
彼女が想像もしていない現実が、ここにある。



