うちの義母が突然「体調が悪いから、家事を全部やってほしい」と言ってきた時、私は素直に心配した。でも義母の顔色は良くて、話し方もしっかりしてた。数日前まで「あなたの仕事なんて素人の遊び」と私の仕事を馬鹿にしていた人なのに。私たちは二世帯同居をしていて、私が家計を支えていた。それなのに夫は「母さんも歳だし、少しは手伝ってやれ」と言った。私はその夜、荷造りを始めた。翌朝、夫に離婚届を置いて家を出る…

うちの義母が突然「体調が悪いから、家事を全部やってほしい」と言ってきた時、私は素直に心配した。でも義母の顔色は良くて、話し方もしっかりしてた。数日前まで「あなたの仕事なんて素人の遊び」と私の仕事を馬鹿にしていた人なのに。私たちは二世帯同居をしていて、私が家計を支えていた。それなのに夫は「母さんも歳だし、少しは手伝ってやれ」と言った。私はその夜、荷造りを始めた。翌朝、夫に離婚届を置いて家を出る...

私は波。つい最近まで夫の両親と同居していたが、先日ついに解消した。理由はよくある嫁姑問題だ。

義母とは最初から仲が悪かったわけではない。むしろ良好な関係だった。夫が長男だから、将来は同居するかもしれないと言われて、私も「仕方ないよね」と渋々納得していた。

ところが結婚してしばらくして、義父が大病で長期入院。仕事を辞めざるを得なくなり、義母は専業主婦で働いた経験がない。夫には年の離れた弟がいるが大学生で遠方生活、仕送りが必要。義実家は金銭的に追い詰められていった。

夫から相談された時、本当はお金だけ援助すれば良かった。でも義母が「あなたたち将来同居するつもりでしょ。だったら今からでもいいじゃない」と強く主張してきたのだ。

ちょうど私たちのアパートの更新時期でもあったし、義実家も相当古い賃貸。事情も事情だし、私も諦めた。ただし条件があった。トイレもお風呂もキッチンも全部別。私たちが2階、義母たちが1階の完全二世帯にしてもらった。

私が在宅でイラストレーターをしていて、夫よりも稼いでいたからだ。依頼を抱えていると徹夜もザラで、睡眠と仕事のペースを守るために絶対に必要な条件だった。

でも義母はこの時点で面白くなかったらしい。私のいない所で夫に愚痴っていたが、夫が相手にしないと分かると直接私の所に来た。

「ねえ、なんで二世帯にしたのかしら? 私は義母の希望で同居にしたはずだけど」

全く意味が分からなかった。話を聞くと、義母は「寝室以外は全部一緒の完全同居」を想像していたらしい。そうなれば家事は全部、嫁である私がやるべきだと思っていた。

「そもそもお金の無駄遣いじゃない。玄関から水回りまで全部が2つあるなんてもったいない」

義母は大きな一軒家の方が広くて贅沢だと主張した。でも最終的に決めたのは夫と義父だった。義母は自分の意見が世の常識だと信じ込んでいて、面倒なことが大嫌いだから間取りの確認もしなかった。家はもう建ってしまったし、今さら変えられないのに義母の怒りは収まらない。

「これじゃ同居の意味がない。波さんに騙された」

そう怒鳴り、私に「食事の支度から掃除、洗濯まで、義母の家と私たちの家の2件分の家事を全部やれ」と迫ってきた。

「あれは専業主婦ですよね」

皮肉ではなく素朴な疑問だった。義父は長期入院中で、義母が様子を見に行くのは2週間に1回程度。仕事もしていないのに、なぜ私が義母の面倒まで見なければならないのか。それに経済的に苦しいならパートでも何でも働けばいいのに、とずっと思っていた。

「あなたの仕事なんて素人の遊びでしょう。息子の稼ぎで住ませてもらっている分際で」

売り言葉に買い言葉とはいえ、仕事をけなされるのは悔しかった。

「この家、私の貯金で建てたんですけど」

「そんな嘘、誰が信じるもんですか!」

ああ、嫌だ。なんでこんな不細工な嫁をもらったのかしら、って顔で言われた。正直、家を建てた時の私たちの積立は、私の収入がほとんどだった。でも義母は絶対に信じないだろう。

数日後、夫から義母が「体調が悪い」と言っていると聞かされた。心配になって義母の部屋に行くと、義母はソファに横たわっていた。でも顔色は悪くなかった。

「あら、波さん。心配してくれたの?」

「ええ、まあ…」

「実はね、あなたにお願いしたいことがあって」

「お願い?」

「私、最近疲れやすくて。だからこれからは、家事を全部やってもらえないかしら。もちろん、お義父さんの分も含めて」

思わず言葉を失った。体調が悪いはずなのに、顔色は良い。話し方もしっかりしている。

「仕事があるので、それは無理です」

「仕事? あんなもの、いつでもやめられるでしょう。家族の方が大切じゃない?」

「お金を稼いでいるのは私です。この家を建てたのも、ローンを返しているのも、ほとんど私です」

「そんなの…、あなたが勝手にやってることでしょう?」

義母はあっさりと言った。私は何も言い返せなくなった。

その夜、夫に相談した。すると夫は、

「母さんは昔からああいう人なんだ。波が気にしすぎるんだよ」

と言った。

「家事をするのは私じゃない。お母さんが自分でやってる。それに2件分なんて、全部私がやってるわけないじゃない」

「でも、少しは手伝ってやってもいいんじゃないか? 母さんも歳だし」

夫は義母の肩を持った。私が仕事をしていること、家計を支えていることを一番知っているはずなのに。

「私、もう限界かもしれない」

「限界って、何が?」

「この家を出たい」

「は? 何言ってるんだよ。せっかく建てた家なのに」

「この家は私が建てた。あなたは一円も出してない」

夫は黙ってしまった。

私はそのまま自分の部屋に戻り、荷造りを始めた。義母には何も言わなかった。言っても無駄だと思ったから。

翌朝、私は夫に離婚届を置いて家を出た。夫は慌てて追いかけてきたが、私は無視した。

私は仕事がある。イラストレーターとしてやっていける。この家を出ても、生きていける。

義母が何を言おうと、私の人生は私のものだ。誰かの思い込みや世間体のために、私が犠牲になることはない。

Thumbnail