「この子まで失ったら、私…」涙で濡れた母親の顔を見た瞬間、胸の奥に何かが引っかかった。大学病院で「天才外科医」と呼ばれ、何百もの手術を成功させてきた俺は、患者の顔を1人も覚えていなかった。左遷された村の診療所で、偶然出会った少年の母親。その女性は、5年前に俺が手術した少年の母親だった。俺はあの子のことを、そしてあの子に読んだ絵本のことも、完全に忘れていた。なのに彼女は今も俺に感謝しているとい…

「この子まで失ったら、私…」涙で濡れた母親の顔を見た瞬間、胸の奥に何かが引っかかった。大学病院で「天才外科医」と呼ばれ、何百もの手術を成功させてきた俺は、患者の顔を1人も覚えていなかった。左遷された村の診療所で、偶然出会った少年の母親。その女性は、5年前に俺が手術した少年の母親だった。俺はあの子のことを、そしてあの子に読んだ絵本のことも、完全に忘れていた。なのに彼女は今も俺に感謝しているとい...

6時間に及ぶ手術は予定より1時間早く終わった。俺は淡々と告げた。「手術は成功しました。完全に摘出しています。経過は順調に行くと思います。」それだけ言って、俺はその場を離れようとした。背中越しに娘の声が聞こえた。「先生、ありがとうございました。父を助けてくださって。」俺は軽く会釈を返しただけだった。言葉を交わす時間があるなら、次のカルテに目を通したい。それが俺のやり方だった。

俺の名前は田。42歳。この大学病院で「天才」と呼ばれてきた。手がけた手術は数えきれない。助からないと言われた患者を何人も生還させてきた自負がある。

医局に戻ると、同僚の中原尚弥が腕を組んで立っていた。「田、ちょっといいか?」「なんだ?これから外来がある。」「昨日の少年の件だ。母親がまた泣いてた。お前、術後の説明5分で終わらせたらしいな。」「必要なことは伝えた。それで十分だろう。」「十分じゃないんだよ。あの母親は、息子がもう一度笑えるかどうか、そこを聞きたかったんだ。」中原の声が廊下に響くほど大きくなった。俺は腕時計に目を落とした。「医者の仕事は命を救うことだ。手を握って慰めるのが仕事じゃない。」「この考え方が、いつかお前を孤立させるぞ。」「結果を出している人間が孤立するなら、それでいい。」中原は何かを言いかけて口を閉じた。代わりに小さくため息をついた。

その日の午後、俺は教授室に呼ばれた。「田君の腕は誰もが認めている。だが医療はチームで動くものだ。君のやり方は少し前を急ぎすぎている。」「処分ですか?」「移動だ。山合に勇気先生という古い友人がやっている診療所がある。そこで少し違う風景を見てきなさい。」移動。言葉の意味を理解するのに数秒かかった。要するに左遷だ。俺は何も言い返さなかった。言い返したところで決まったことは変わらない。ただ胸の奥に苦いものが残った。

1ヶ月後、舗装の途切れた道を軽自動車が揺れながら走っていく。窓の外には棚田と杉林、それから青い空が広がっていた。道の先に古びた木造の建物が見えてくる。看板には「有気診療所」とだけ書かれていた。

木戸を開けると、消毒液の匂いに混じって味噌汁の香りがした。受付の奥から白衣の女性が顔を出した。「田代先生ですね。お待ちしていました。」化粧気はほとんどない。それでも目を引く美しさがあった。肌は健康に日に焼けていて、立ち姿に凛としたものがあった。「看護師の霧島まほです。これからよろしくお願いします。」「田です。よろしく。」俺は鞄を置きながら診療所の中を見渡した。診察室は2部屋しかなく、待合室には木のベンチが並んでいる。奥の部屋から白髪が混じりの男性が現れた。「やあ、よく来てくれた。所長の勇気だ。長旅、疲れただろう。」勇気の手はゴツゴツとして温かかった。「ここはね、田君。手術もできない。最新機器もない。だが患者はたくさんいる。みんなこの村で生きてきた人たちだ。」「精一杯やらせていただきます。」「うん。焦らずでいい。」

その夜、俺は診療所の2階にある宿舎で荷物を解いた。窓を開けると虫の声が押し寄せてくる。都会の夜とはまるで違う。

翌朝、外来が始まると、俺はすぐに違和感を覚えた。診察そのものは難しくない。腰痛、血圧、風邪気味。ありふれた症状ばかりだ。だが患者は診察が終わろうとしない。「先生、うちの孫がな、東京の大学に行ったんよ。」「それは結構なことです。お薬は前回と同じで出しておきます。」「それでな、最近電話もよさんで…」俺は次の患者を呼ぼうとした。その時、霧島が横から自然に話を引き取った。「正さん、お孫さん忙しいのよ。前にも言ったでしょ。あの子はちゃんとしてるから。」「そうかいね。」女性は満足そうに頷いて、ようやく立ち上がった。霧島は笑顔で見送り、それから俺に向き直った。「田先生、ここでは診察が終わってからの方が長いんです。」「効率が悪いと、患者の数をさばけないんじゃないか。」「さばくですか?」霧島の口調は穏やかだった。「ここの人たちは、さばかれるために来ているんじゃありません。」俺は何も言い返せなかった。

赴任して2週間が経った雨の午後だった。診療所の引き戸が乱暴に開く音がして、俺は顔を上げた。若い母親がぐったりした少年を抱きかかえている。少年の顔は青白く、口元が震えていた。ヒューヒューという呼吸音が待合室まで届いてくる。「先生、り太が…り太が息できなくて…」霧島が素早く駆け寄り、俺に目で合図を送った。「喘息です。山野り太君、10歳。何度かこちらでも処置しています。」「処置室をすぐに用意してくれ。」俺は冷静だった。喘息発作は慣れた症状だ。酸素マスク、気管支拡張薬、ステロイドの点滴。手順は体に染みついている。少年の小さな胸が必死に上下していた。俺は手早く処置を進めた。5分、10分、15分。ヒューヒューという音が少しずつ静かになっていく。やがて少年の頬にわずかに赤みが戻った。「もう大丈夫だ。落ち着いた。」

母親はベッドの脇に膝をつき、息子の手を握りしめていた。俺はカルテを開くとペンを握った。その時、母親が顔を上げた。涙で濡れた目が俺を見つめていた。「先生、ありがとうございます。本当にありがとうございます。この子まで失ったら、私…」俺はペンを止めた。「この子まで」という言葉が耳の奥に残った。母親の顔をもう一度見た。目尻のしわ、頬の影、髪をかき上げる仕草。どこかで見たことがある気がした。だが思い出せない。ただ胸の奥に何かが引っかかった。

霧島が静かに母親の肩に手を置いた。「みわさん、もう大丈夫。り太君、よく頑張ったね。」母親は何度も頭を下げ、霧島の手を握り返していた。俺はその光景を少し離れた場所から見ていた。俺は自分の胸の引っかかりが何なのか分からなかった。

雨上がりの朝、診療所の窓から差し込む光が待合室の床に長い影を落としていた。外来が一段落した昼下がり、俺は所長室に呼ばれた。「田先生、昨日のり太君、よく処置してくれた。」「いえ、喘息発作の処置は基本ですから、慣れています。」「うん。だが、あの母親の顔、どこかで見た気がしなかったかね。」俺は湯呑みを持つ手を止めた。所長は穏やかな目で俺を見ていた。「5年前のことだ。この村から1人の少年が大学病院に運ばれた。先天性の心疾患でな。村の病院じゃどうにもならなかった。」「5年前…」「執刀したのは田先生。あなただ。」俺は息を飲んだ。5年前、俺はまだ自分の腕を磨くことだけに夢中だった頃だ。難手術ばかりを引き受け、年に100件近く執刀していた。1人1人の顔など覚えていられるはずもなかった。「少年の名前は山野裕介。り太君のお兄ちゃんだよ。」「すみません。所長。正直に言うと、覚えていません。」「そうだろうな。あなたにとっては、何百という患者の1人だ。」

所長は机の引き出しから1枚の写真を取り出した。古い写真だった。病室のベッドに座った少年が痩せた顔で笑っている。その横に白衣を着た男が立っていた。俺だった。俺は少しぎこちないが、確かに少年に向かって微笑んでいた。「裕介君の母親、みわさんだよ。彼女がこの写真を大事にしまっている。」「私がこんな顔で笑っていたんですか?」「ああ。聞いた話じゃ、手術後毎日病室に顔を出していたそうだ。術後の説明を何度も何度も繰り返したと。」俺は写真の中の自分を見た。今の俺にはこんな顔ができる気がしなかった。いつから俺はこの顔を忘れたのだろう。「人はね、田先生。同じ仕事を続けているうちに、いつの間にか最初の頃の自分を忘れていく。」俺はしばらくの間、その少年の顔を見つめていた。

その日の夕方、俺は診療所の裏手にある畑の脇でまほと並んで立っていた。まほは村の老人から預かったという大根を籠に入れて運んでいた。俺は荷物を持つと言って、半ば押し付けられた形で籠を抱えていた。夕日が棚田の向こうに落ちかけている。「霧島さん、山野裕介君のことを知っているか?」「所長から聞きましたか?」「ああ、さっき。」まほは足を止めた。「裕介君は、私が看護師になって初めて最後まで見とった患者さんなんです。」「最後まで。」「大学病院で手術を受けた後、しばらくは元気でした。学校にも通って、り太君とよく遊んでいて。でも2年経った頃から少しずつ体が弱くなって、3年目の冬に亡くなりました。」俺は何と言えばいいのか分からなかった。助けたつもりの命が、長くは続かなかった。それを目の前の女性はずっと近くで見ていた。「私、最初は田先生のこと許せなかったんです。」「俺を?」「手術は成功したのに、なぜ助からなかったのか。もっと何かできたんじゃないかって。先生のせいじゃないって、頭では分かっていました。それでも誰かを責めたかったんだと思います。」まほの声に恨み事の響きはなかった。「でもみわさんは違ったんです。お葬式の日に私にこう言ってくれたんです。『裕介はね、東京で手術を受けた日が一番嬉しそうだったの。お医者さんが何度も病室に来てくれて、絵本を読んでくれたって。あの日が希望をもらった日だったって。』」「絵本…」「覚えていませんか?」「いや、全く。」俺は唇を噛んだ。何百という手術の合間に、俺は絵本を読んでいたのか。信じられなかった。だが所長が見せた写真の中の自分の顔を思い出すと、ありえない話ではない気がした。「みわさんは感謝してくれている。私はそれを聞いて、ようやく田先生のことを許せたんです。」「許すなんて…俺は覚えてさえいなかった。」「だから今、知ってください。」まほはまっすぐに俺を見た。夕日が彼女の頬を赤く染めていた。「先生の腕は確かに人を救いました。でも救ったのは命だけじゃないんです。あの家族にとって、先生が病室に通ってくれた時間そのものが宝物だったんですよ。」俺は籠を抱えたまま動けなかった。胸の奥で何かが崩れていく音がした。風が棚田を渡っていく。まほは何も言わずにまた歩き出した。

それから3日後の夜、俺の携帯電話が鳴った。画面に表示されたのは中原尚弥の名前だった。診療所の宿舎で、俺は窓辺に立って電話を取った。「田、元気にしてるか?」「ああ、なんとかな。」「実は教授からの伝言だ。お前を大学に戻したいと言ってる。」「戻す?」「来月から心臓外科の部長ポストが開く。教授はお前をそこに据えたいそうだ。腕のいい執刀医が足りていない。」俺は窓の外を見た。山の稜線が月明かりに浮かび上がっている。「お前の場所は村の診療所じゃない。最先端の医療を必要としている患者がいる。戻ってこい。」「少し考えさせてくれ。すぐには返事ができない。」「考える?お前らしくないな。即決でいいだろう。」「悪いが、今はそういう気分じゃないんだ。明日、もう一度かけ直す。」電話を切った後、俺はしばらく動けなかった。半年前の俺なら迷わずに頷いていただろう。「天才外科医」と呼ばれる場所に戻る。それが当然の選択だったはずだ。だが今は違った。

翌朝、俺は診療所のベンチに座って村人たちの様子を眺めていた。診察を終えた老人がまほと何やら笑い合っている。まほは相手の手を握り、ゆっくりと頷いていた。老人は深く頭を下げて、満足した顔で帰っていった。その光景を俺はしばらく見ていた。目の前の道では近所の子供たちが駆け回っている。「まほ姉ちゃん、見てこれ拾った。」「あら、綺麗な石ね。お母さんに見せてあげな。」まほの笑顔は、俺がこれまで見てきたどんな名医の表情よりも、医療というものの本質を物語っているように見えた。人を助けるとはこういうことなのだ。病を直すだけが医者の仕事ではない。俺は自分の胸に問いかけた。お前はどこで医者を続けたいのか。天才と呼ばれる場所か?それとも必要とされている場所か?答えはまだはっきりしなかった。

桜のつぼみがようやく膨らみ始めた頃だった。その日の午後、診療所の電話が鋭く鳴った。受話器を取ったまほの表情がみるみる変わっていく。俺はカルテを置く手を止めた。「みわさん、落ち着いて。今すぐ救急車を…いえ、私たちが向かいます。場所は?」電話を切ると、まほは短く息を吐いた。「り太君です。家で発作です。前回よりひどいみたいです。」「車を出す。所長、留守を頼みます。」勇気所長は黙って頷き、出口まで見送ってくれた。軽自動車に医療鞄を積み、俺はハンドルを握った。助手席のまほが酸素ボンベを膝に抱えている。村道を走る車の中で、俺たちは言葉を交わさなかった。

山野家の玄関を開けると、奥の和室から苦しげな呼吸音が聞こえてきた。り太が布団の上で体を折り曲げている。唇は紫色で、首筋には汗が滲んでいた。みわが息子の背中をさすりながら震えていた。「先生、お願いします。り太を…」俺は鞄を開け、すぐに気管支拡張薬の準備をした。まほが酸素マスクを少年の口元に当てる。俺は静脈を確保し、薬剤を投与した。手はいつも通り動いていた。だが今日の俺はそれだけでは終わらなかった。処置をしながら、俺はみわの方に目を向けた。「みわさん、り太君は大丈夫です。必ず楽にしてあげますから、安心してください。」みわは目を見開いて俺を見た。それから堰を切ったように涙をこぼし、り太の手を握った。少年の呼吸が少しずつ整っていく。ヒューヒューという音が、徐々に静かな寝息に変わっていった。15分ほどして、り太はようやく落ち着き、目を開けた。「母さん、僕、生きてる?」「生きてるよ。生きてるからね、り太。」母親は息子の額に自分の額を押し当てた。俺は吸引機を片付けながらゆっくりと立ち上がった。まほが俺の隣で息を吐く音が聞こえた。彼女の目が、いつもと違う俺を見ていた。「今夜は念のため診療所で預かりましょう。みわさんも一緒に泊まっていってください。」「先生、本当に…何度も何度もすみません。」「謝ることじゃありません。り太君はよく頑張りました。」

その夜、診療所の処置室でり太は深く眠った。俺はベッドの脇に椅子を置き、しばらく少年の寝顔を見ていた。5年前、俺はこの子の兄の手術をした。そのことを俺は覚えていなかった。だが今夜のことは生涯忘れないだろう。廊下からまほがそっと顔を覗かせた。彼女は何も言わずに俺の隣に椅子を引いた。2人で少年の寝息を聞いていた。

翌朝、俺は勇気所長と向かい合っていた。机の上には大学病院から届いた正式な辞令の封筒が置かれていた。中原を通じて打診されていた心臓外科部長のポストだ。「田先生、気持ちは固まったかね。」「はい。お返事を所長に最初に伝えたいと思ってきました。」俺は封筒を机の真ん中に戻した。「私はここに残ります。大学には戻りません。」「いいのかね?天才外科医と呼ばれた腕を、ここで眠らせて。」「眠らせるつもりはありません。ここでも腕は使えます。ただ、使い方を変えるだけです。」勇気所長はしばらく俺の顔を見ていた。「君の母親が、なぜあなたに感謝し続けているか分かったかね。」「命の長さじゃないと、霧島さんに教えられました。あの家族にとって、希望をもらった日があったこと。それだけで医療には意味があった。私はずっとその意味を見落としてきたんです。」「うん。気づけたなら、それでいい。」

その日のうちに、俺は中原に電話をかけた。電話の向こうで中原は何度も俺の名前を呼んだ。「田、本気か?お前、自分の腕がどれだけ貴重か分かっているのか?」「分かっている。だからこそ、ここで使いたいんだ。」「あんな村で何ができるって言うんだ?」「中原、俺はな、5年前に手術した少年のことを覚えていなかった。お前に怒られたあの少年の母親のことも、多分覚えていないだろう。俺は命を救った人間の顔を1人も覚えていない医者だったんだ。」電話の向こうで中原が黙った。「ここでなら覚えていられる。1人1人ちゃんと覚えていられる。それが今の俺には必要なんだ。」「お前、変わったな。」「ようやく戻れたのかもしれない。最初の頃の自分に。」電話を切った後、俺は窓の外を見た。胸の中にもう迷いはなかった。

夕方、俺は畑の脇道でまほと並んで歩いていた。彼女には所長への返事を伝えた後だった。「先生、本当に良かったんですか?」「ああ、自分で決めたことだ。後悔はしていない。」「私、嬉しいです。村のみんなもきっと喜びます。」まほは俺の方を見ずに前を向いて歩いていた。だがその横顔が夕日に照らされて、わずかに微笑んでいた。俺はその横顔をしばらく見ていた。

それから1ヶ月が経った、よく晴れた日曜日のことだった。診療所の前では村の子供たちが集まって笑い声をあげていた。まほが手作りのおにぎりを配り、勇気所長が縁側でお茶をすっている。その輪の中に、り太とみわの姿があった。り太はすっかり元気を取り戻し、他の子供たちとかけ回っていた。みわは縁側に座っていたまほにぽつりと話しかけた。「まほちゃん、私ね、田先生がここに来てくださったこと、裕介がくれた贈り物だと思ってるの。」「裕介君が…」「あの子が5年前に田先生に出会わなかったら、こうしてまた先生にり太を見てもらうこともなかったと思うの。不思議よね。裕介はもういないのに、ちゃんと弟を守ってくれているみたい。」みわの目に涙が滲んでいた。まほはみわの手を取り、しばらく握っていた。

り太が駆け寄ってきて、俺の白衣の裾を引っ張った。「先生、見て。春になったら、お兄ちゃんが好きだった花が咲いたんだ。後でお墓に持ってくの。」「そうか。お兄ちゃん、きっと喜ぶな。」「先生も一緒に来てくれる?」「ああ、一緒に行こう。」少年は満足そうに頷き、また友達の元へ走っていった。俺はその小さな背中を見送りながら空を見上げた。山合いの空はどこまでも青く澄んでいた。

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