西田部長は、俺の名刺も見ずに、ソファにふんぞり返ってこう言った。「お前が噂の中卒か。俺は学歴のない無能のバカは大嫌いだ。無能の役立たずは、便所掃除でもしてろ」…

西田部長は、俺の名刺も見ずに、ソファにふんぞり返ってこう言った。「お前が噂の中卒か。俺は学歴のない無能のバカは大嫌いだ。無能の役立たずは、便所掃除でもしてろ」...

「部長、約束の時間を過ぎていますが、まだでしょうか」

受付の女性社員が、困ったように俺と目の前の男を交互に見る。今日この会社に来たのは、新しい部長に会うためだ。7年間付き合いのある取引先の担当者が代わり、初めての顔合わせ。その相手が、約束の時間を30分過ぎても現れない。

ようやくエレベーターから現れたのは、40代半ばの恰幅のいい男だった。名刺も出さず、ソファにふんぞり返って、こう言った。

「で、何の用だ? 」

俺は名前を名乗り、特許安全装置の認証更新について説明を始めようとした。次の瞬間、その男、騏いは手を上げて俺の言葉を遮った。

「ああ、その話なら結構だ。うちはもう、あんたの会社とは契約しないから」

「え? 」

「担当を引き継いだ時から思ってたんだよ。あんたのところは高すぎる。他の業者なら、年間3割も安くできるそうだ」

俺は、この装置が食品工場の安全を守るための特許技術であり、3年に一度の認証更新を怠ると、安全上の理由から装置が自動的にロックされる仕組みだと説明しようとした。しかし騏いは、まるで聞く耳を持たない。

「安全装置なんて、どこも大して変わらないだろう。どこの業者でもメンテくらいできる。悪いけど、もうあんたは用済みなんだよ。部害者はさっさと消えろ」

昨日まで何度もメールを送り、電話もした。返事はなく、今日がまさに認証更新の期限だった。俺は最後にこう確認した。

「あなたの選択です。これで二度と安全装置は解除できませんよ」

騏いは嘲笑した。「負け犬の遠吠えだな。明日になった途端、完全ロックなんてなるわけないだろう」

俺はただ「そうですか」と微笑み、その場を後にした。

翌日の午前11時、会社で仕事をしていると、騏いから電話がかかってきた。予想通り、慌てふためいた声だ。

「ま、増場さん! 頼む。今すぐ来てくれ!

Thumbnail

「どうされました? 」

「分かってるくせに! うちの工場が止まったんだ! 」

騏いが連れてきたという別業者は、俺の特許技術に対応できず、装置は完全にロック。製造ラインは停止し、工場はパニック状態だったそうだ。俺は静かに言った。

「ですから言いましたよね。二度と解除できませんよって。あなたが担当として責任を取ればいいことです」

その日のうちに、騏いの会社の社長から俺の会社に連絡が入った。直接謝罪したいという。俺の会社の社長と共に、先方の社長と騏いが頭を下げに来たのだ。社長は土下座までして、認証更新を懇願した。俺の社長は、今回だけはと条件を出した。騏いの厳格な処罰を求める、と。

その後、騏いは諭旨解雇となった。会社に大損害を与えた責任を取らされたのだ。再契約の金額は以前の1.

5倍。そして今も、あの工場で俺の特許安全装置は正常に稼働している。

騏いが何を考えていたのかは、知らない。知りたくもないが、あの時、少しでも俺の言葉に耳を傾けてくれていたら、と思う時がある。信頼は一度失えば、取り戻すことは容易じゃない。それを改めて実感した出来事だった。

俺は荒木、42歳。家電製品用の部品工場を経営しながら、自らも開発に携わる技術者だ。従業員は10人ほどの小さな工場だが、全員が腕利きの技術者で構成されている。12年前から、業界採用手の家電メーカーと取引を続けてきた。

4年前、俺は独自構造により電力消費を30%削減し、動産を50%も提減できる画期的なモーターの開発に成功する。この技術で特許を取得すると、家電業界から大きな注目を集めた。

真っ先に声をかけてきたのは、従来から取引のある采耳メーカーの資材調達部長、い原だった。

「荒木さん、是非我が社でこの特許モーターを独占させていただけませんか? 特許使用料は売上高の10%でいかがでしょう? 」

い原の熱意に答え、俺は特使用契約を結ぶことにする。そして4年間、良好な関係が続いた。

ところがある日、い原から連絡があり、自分が移動することになったと告げられる。心配そうに、後任のことをこう話した。

「中西という者なんですが、中国での海外勤務から戻ってきたばかりで、全社的なコスト削減を最優先に掲げているという話を耳にしましたもので」

その不安は、的中した。

3週間後、定例の納品の日、初めて会った中西は、椅子にふんぞり返って、こう言った。

「この特許使用料、売上高の10%って高すぎるよね。業界相場の最低額2%にしてもらえる? 」

「それは困ります。この技術は4年かけて開発したもので、大抵が効かない特許技術なんです」

中西は鼻で笑った。「モーターなんて中国のメーカーがいくらでも作ってる。同等品が1/3価格で調達できるんだよ」

俺が必死に説明しても、中西は聞く耳を持たない。「オタクみたいな零細工場がうちみたいな大手に強気にでるとは笑わせるよね」そして、俺が自負する特許モーターの箱を指差して言った。

「悪いけど、それ受け取り拒否で」「中国製の方が安くて優秀だ。本社は用済みだ」

さらに、用意していた契約解除通知書を突きつけてきた。「これにサインして帰ってくれ」

俺は一瞬、迷いが頭をよぎった。12年間の信頼関係との約束。しかし、中西の傲慢な態度と、俺の技術を過論あの言葉が、決意を固めさせた。

「わかりました。それではこちらで引き取らせていただきます」

俺は淡々と署名した。そして、その場で携帯電話を取り出し、以前から熱心に独占契約を求めていた中堅メーカーの営業担当、前川に電話を入れた。

「前川さん、荒木です。大手メーカーとの特許契約が本日付けで正式に解除されました。音社と契約についてお話ししたいのですが」

電話口の前川は、耳を劈くような興奮した声で答えた。「本当ですか?

すぐに伺います! 」

数時間後、前川と中堅メーカーの社長を含む役員3名が、俺の工場に揃って訪れた。破格の条件、特許使用料は売上高の12%で、その日のうちに契約が成立する。翌朝、業界ニュースサイトのトップページには、大きな見出しが踊っていた。

「中堅家電メーカー、画期的な特許モーター技術の独占契約を締結」記事は、俺の会社名も明記され、技術の詳細まで詳しく報じられ、業界の勢力図が大きく変わる可能性があると分析されていた。

俺が従業員たちと喜びを分かち合っていると、事務所の電話が鳴った。い原からだった。慌てた様子で、中西が契約解除の1ヶ月以上前から、無断で中国のメーカーに代替モーターを発注していたこと、そして、そのモーターが俺の特許モーターのような性能を全く出せず、試作段階で電力消費も騒音も従来品より悪化したことを知らせてきた」。

電話を切って間もなく、今度は中西本人から電話がかかってきた。昨日の傲慢な態度とは打って変わり、声は上ずっていた。

「荒木さん、どうか契約を元に戻していただけないでしょうか? 特許使用料についても見直します。売上高の15%でも20%でも構いません」

「中西部長、すでに他企業と独占契約を締結しました。音社に提供することはできません」

そう告げて、俺は電話を切った。

すると翌日の午後、工場の入り口に高級車が止まった。後部座席から降りてきたのは、60代と思しき品のある男性と、青ざめた顔の中西だった。年配の男性、千田専務取締役が深く頭を下げる。

「この度は弊社の中西が大変失礼なことをいたしまして、誠に申し訳ございませんでした」

そして、その場で、なんと中西が俺の前に膝をつき、頭を下げた。完全な土下座だ。

「荒木社長、本当に申し訳ございませんでした! もう一度お願いさせてください!

契約を元に戻していただけないでしょうか? 」

声は震えていたが、俺の決意は揺がなかった。「中西部長、昨日も電話で申し上げた通りです」千田専務も、中西を厳しい口調で叱責した。中西は部長職を解かれ、地方の関連会社へ左遷となった。大手メーカーは主力技術を失い、業界での地位が急速に低下した。一方、俺と契約した中堅メーカーは、特許モーターを搭載した新製品が大ヒットを記録した。俺の工場も、従業員を5人増やし、最新の設備を導入することができた。

技術力こそが、全てを変える。俺はこれからも、確かな技術の力で未来を切り開いていくつもりだ。

俺の名前は長岡、35歳。我が社は機械部品を製作している。中卒でこの会社の製造部門に採用してもらい、28歳になるまで工場で働き、実績が認められて工場管理部門へ移動になった。学歴を気にする一部の社員は、眉を潜めていたが、中でも同僚の野村は、なぜかしつこく俺に絡んでくる。「中卒のバカにデスクワークなんかできるはずないだろう」野村は、いいところの大学を出て、専務の親戚という後ろ盾で、人事部でどんどん昇進してきた男だ。

そんなある日、工場から管理部門へ移動してきた20歳の女性社員がいた。寺西さんという、ギャル系で、化粧が濃く、髪色も明るい。しかし、見た目とは裏腹にハキハキとした返答で、塗装や研磨の部門で働いていた経験から、機械の知識も豊富だった。俺は彼女の教育係になり、あっという間に戦力として頼りになる存在になっていった。

その日、俺は珍しく外出し、客先での打ち合わせを終え、倉庫へ備品を取りに行くと、誰かの話し声が聞こえてきた。

「だから、こういうのはやめてくださいって言ってるじゃないですか」

「俺は専務の親戚で、将来は人事を仕切るかもしれない人間だぞ。今からコビを売っておいた方がいいんじゃないか」

声の主は、同僚の野村と、寺西さんだった。野村が寺西さんの腕を掴んでいる。俺は慌てて走りより、間に入った。

「俺の部下に何してんだ? 」

「関係ないだろ」

「関係あるんだよ。この子は俺の部下なんでね」

体格で勝る俺に対し、野村は「ちっ」と舌打ちし、その場を離れようとした。「テラニシさんに謝れ」という俺の声は無視して。

3日後、予想もしていなかった出来事が起こった。出勤していつも通り働いていると、人事部長が野村を連れてやってきて、俺たちを会議室に呼び出した。

「君たち、コンプライアンス違反をしているね。村君から情報提供と証拠の提出があった」

俺たちがやっていないことだというのに、目の前に差し出されたのは、巧妙に作られた嘘の証拠だった。俺が抗議すると、人事部長は「黙りなさい」と一蹴した。処分は追って伝える、と。

会議室を出る際、野村が勝ち誇ったように言い放った。

「お前らは、おそらく廃業寸前の工場に左遷されるだろうな。バカのくせに大卒のエリート様に逆らう底辺には、お似合いのマ踏だ」

俺は、反抗する術もなく、左遷を受け入れるしかなかった。情けなかったが、こういうタイプの人間は、まともに相手をしたところで無駄だということは分かっていた。

それから2ヶ月後、俺と寺西さんは、左遷先の廃業寸前の工場で、後片付けをしていた。そんな時、管理部の社員たちが困った顔で駆け込んでくる。「工場の機械が故障しちゃって、何をどうやっても動かないんですよ」

現場へ向かうと、古い機械が停止していた。森工場長が困り果てている。そこへ、野村も若い社員を連れて現れ、イライラした様子で声を上げた。「こんな単純な機械も動かせないなんて、現場作業員ってのはバカの集まりなのかよ」そして、勝手に機械をいじり始め、完全に停止させてしまった。

大騒ぎになる中、俺と寺西さんは機械の様子を観察した。

「長岡先輩、これ直せますよね」

「そうだな。やってみるか」

工場長の許可を得て、俺たちは作業に取りかかった。野村が「これ以上機械が壊れたらどうするんだ! 」と喚くが無視だ。20分後、機械を再起動させると、問題なく稼働した。周りからは、賞賛の声が上がる。

「長岡君、助かったよ!

呆然としていた野村が、我に返って叫んだ。「な、なんでお前に直せるんだ? 中卒の無能のくせに! 」

それに答えたのは、森工場長だった。「無能はあんただろう。長岡君は、工場勤務時代、担当外の作業も積極的に手伝ってたんだよ。幅広い業務を担当していくうちに、工場内の機械や業務をほぼ完全に把握したんだ」

その言葉を聞き、野村が連れてきた若い社員が首をかしげる。「それにしても、こんなに頼れる人材がなんでコンプライアンス違反で移動になったんだ? 」

「長岡君と寺西君がコンプライアンス違反だと?

俺は、壁地の工場の業務改善のために移動すると聞いてるぞ」

森工場長は、怒りと困惑の混じった声をあげた。「俺は常々、長岡君をお手本にしなさいと現場社員に周知してる」そして、野村を鋭い目で睨みつけた。「お前、嘘ついてんだろ? 」「俺の首をかけてもいいぞ」あまりの迫力に、野村は半泣きで白状した。

森工場長は容赦しなかった。「2人に謝れ」。

その後、俺は社長に連絡して全てを説明した。社長室で、森工場長の証言もあり、俺たちの左遷は一旦留保となり、調査の結果、野村の証拠が嘘と認められ、奴は諭旨解雇処分となった。野村の奥さんは、解雇の理由を知り、愛想を尽かし、早々に離婚届を提出したという。

一方、俺と寺西さんは、結局、本社ではなく、壁地の廃業寸前の工場で働くことになった。実際に移動が決まった後、寺西さんが「ボロい支社の立て直しとかドラマみたいで面白そう」と言い出したのだ。野村には腹が立っていたが、移動に関してはむしろ楽しみにしていたため、である。

「仕事は山積みだな」

「退屈しなさそうですね」

腕まくりをして笑顔を浮かべる寺西さんを見て、釣られて笑ってしまう。「よし、やるか」「はい」この子と一緒なら、どんな困難も乗り越えられるだろう。

俺の名前は杉原、47歳の会社員だ。科学工業系の会社で営業部長として働いている。ある会社の取引先の営業部長、水野とのやり取りに、悩んでいた。水野の会社とは7年にも渡る付き合いで、大口のお得意様でもあるが、水野が新部長になってから、こちらが下受けだと完全に見下しているのだ。

「これ、高すぎない? 値下げしてよ。できるでしょ。この物価高でうちも困ってんだよね」

今日も、打ち合わせスペースで、水野は椅子にふんぞり返ったまま、無理な値下げ要求をしてくる。「長年の付き合いだから情けであんたのとこの製品を買ってやってるようなもんなの。わかる」。そして最後に、こう吐き捨てた。

「どうしても要求が飲めないなら、土下座でもしてみせろよ。そうしたら考え直してやらんでもないぞ」

俺は深く息を吐き、立ち上がった。

「わかりました。今まで7年間もの間お世話になりました」

俺がすんなり了承するとは思わなかったのか、水野は露骨に慌て始めたが、俺は構わずその場を去った。実は、俺には、この日のために用意していたものがある。最近になって、社長の一人息子である誠一さんが他社での修行を終え、うちの会社に戻ってきたのだが、誠一さんが俺の話を聞き、上層部を説得してくれたのだ。「次に水野に無理を要求された際は、契約終了も視野に入れていい」と、許可をもらっていたのだ。

水野の方から契約終了を持ち出されたのは、むしろ幸運と言ってもよかった。

その翌日、俺が客先から戻ると、部下が慌てた様子で駆け寄ってくる「水野部長が、アポなしで来られています! 」会議室に急ぐと、そこにはうちの課長と誠一さん、そして水野がいた。水野は、来客用のソファーに座った状態で、深く頭を下げていた。

「こここの度は、とんでもないことを」

プライドの高い水野からは想像もつかない態度に、俺は目を丸くした。話を聞くと、今朝のニュースで、うちの会社が開発した新しい特許が紹介され、その絶縁体に、水野の会社が大きな需要があることが発覚したらしい。水野は「お願いです。今までの無礼はお詫びいたします。どうかもう一度音社と契約をさせてください」と言い、なんと床に膝をついて土下座までした。

しかし、誠一さんがきっぱりと言った。「あなたにとって土下座は誠意になるのでしょうが、我々にとってはそうではありません」俺も続けた。「ビジネスの場で、冗談、軽口、その時点で恩社は我が社を軽論じているのと同じです」。そして、こう告げた。「本社との契約は、今期一杯で終了ということになります」

水野は「待て!

昨日のは冗談だったんだ! 」と叫んだが、時すでに遅し。誠一さんが「お引き取りください」と言うと、水野は「くそ」と埋めきながら会議室を出ていった。

その後、水野は、契約を一方的に終了させた責任を問われ、諭旨解雇となり、俺への土下座や価格の強要の件から、他の会社からも信用を失ったいうひどい有様だった。

うちの会社は、ニュースの影響もあってか、営業部がこれでもかというほど忙しくなっている。水野の会社は、SNSで炎上している。俺はこれからも、自信を持って、技術の信頼性を紹介していこうと思っている。

俺の名前は酒井、33歳。父親は最低な人で、高額の借金を作った挙げ句、浮気相手と駆け落ちして姿を消した。母親が借金を一人で背負うことになり、家庭環境のせいで、高校進学もできず、中卒で就職した。担任の先生の紹介で、そこそこの規模の会社の支社に採用してもらえた。「頑張れば、給料もアップして、借金返済に苦しむ母を楽にできるだろう」そんな思いを胸に、必死になって働き続けると、対人能力の高さを評価され、営業部に配属となり、33歳にして営業部の部長補佐まで登り詰めた。おかげで半年前に借金を完済し、ようやく自由を手に入れる。

そんな時、支社の森市社長から、本社の営業部で人材を探していると聞かされた。「酒井君、本社に行く気はない? 」これは、千載一遇のチャンスだ。「行きます。やらせてください」こうして俺の本社が決定した。

しかし、期待に胸を膨らませていた俺を待っていたのは、予想外の現実だった。

配属初日、営業部のトップである西田部長に挨拶へ行くと、部長の口から飛び出したのは、俺への罵倒の言葉だった。「お前が噂の中卒か。俺は学歴のない無能のバカは大嫌いだ。無能の役立たずは、便所掃除でもしてろ」

同じ支社出身だという小倉という男が、俺の背中を強く押す。「便所はあっちだ。掃除用具は中にある。お前は1日中、汚い便所掃除でもしてろよ」エリート集団は、ゲラゲラと笑いながら去っていった。

西田部長は学歴至上主義で、一定レベルの大学出身者じゃなければ認めないという。そして、小倉たちエリート集団は、西田部長に媚びることで、本社での立場を確保しているのだろう。俺は配属初日から、掃除や書類の整理など雑用ばかりし付けられ、小倉たちからは小使いのように扱われた。

そんな日々がしばらく続き、7月のとある猛暑日のこと。西田部長は俺に外回りを命じた。「営業らしい仕事を体験させてやるよ」嫌がらせの領域を超えているが、俺は文句も言わず会社を出た。そして数時間後、俺は報告した。

「西田部長、大型案件、大手企業との商談のチャンスを掴みました」

西田部長は最初信じられないという顔をしたが、名刺や書類を確認すると、小倉を呼び出し、こう言った。「こんな大型案件、中卒無能には任せられん。担当は小倉君にするからな」

しかし、俺は即座に返した。「いえ、先方は商談の条件として、俺が担当することを要求しています」

2週間後の商談当日、西田部長と小倉たちが、勝手に見学に来た。「中卒無能の初商談、見てみたいからな」小倉たちは、俺が失敗した時のためにと、自作のプレゼン資料まで用意していた。

打ち合わせは、担当者の江田課長の穏やかな雰囲気の中で始まり、俺が一通り説明を終えると、江田課長は満足そうに頷いた。ところが、黙って見ていた小倉が、生き生きとした顔で口を開いた。「先ほど酒井が提示した下請け依頼予定の企業ですが、あの会社よりいいところを知ってます」しかし、小倉が差し出した資料に、江田課長は目を通すと、顔を顰めた。「確かにこの会社は条件だけ見れば最適です。ですが数年前に仕事を任せた際、うちの提示する条件を満たしていただけなかったので、こことは取引をしないと決めているんです」それからは、小倉の提案は、こごとく否定された南昌江田課長は呆れたように言った「先ほどからのあなたの提案ですが、我が社のことをしっかり調べていたら、そのような考えには至らないはずです」そして、俺にこう言った。「こちらのプレゼン料は素晴らしかったですよ。さすが森社長が認めた方ですね」

商談が終わり、会社を出ると、小倉が俺の肩を掴んだ。「おい、一体どんな手を使ったんだ?

俺は、今回の商談が元いた支社の森市社長の紹介であったことを話した。「森市社長には、私を本社に推薦していただいた恩がある。江田野さんを紹介してもらい、そこからは俺の力で頑張って」と。

そして、俺はポケットからあるものを取り出した。」部長たちの俺に対する罵倒の数々は、この録音機に記録してあります。今日にでも、これを人事課長に提出しようと思ってたところです」西田部長は顔面蒼白になり、「なあ、落ち着いて話し合わないか」と媚び始めたが、俺は取り合わなかった。「今後何が起きようと、部長が招いた自業自得の結果です。覚悟して受け入れてくださいね」

この後、俺は証拠を手に人事課長に相談し、事態はスムーズに進んだ。西田部長は、部長職を解かれ、人手不足を理由に支社への移動を命じられた。「要するに、左遷だ」。小倉たちエリート集団も、厳重注意の上、今後の昇進はなしという厳しい処分となった。自称エリートでプライドが高い奴らにとっては、かなり厳しい内容だろう。

一方、俺は、江田課長との商談を成功させた後、実力で複数の会社から契約を取ってきた。西田部長がいなくなり、風通しの良くなった営業部で、俺はすっかり一員として馴染んでいる。せっかく掴んだチャンスは、存分に活かさなければ。俺は今日も、全力で仕事に励んでいる。