夫が突然、狂ったようにテーブルを叩きながら叫んだ。「1億円当たったぞ!お前とは離婚だ!」 古臭い家を押し付けて、娘まで奪おうとする勝ち誇った夫。しかし、私は微動だにしなかった。ただ静かに、その瞬間を待っていたのだ。「離婚には同意するわ。でも、莉花はあんたにくれてやる」 その言葉で夫の顔色が一変した。彼は知らなかった。私が持っている、たった一つの切り札を。 CTA:…

夫が突然、狂ったようにテーブルを叩きながら叫んだ。「1億円当たったぞ!お前とは離婚だ!」 古臭い家を押し付けて、娘まで奪おうとする勝ち誇った夫。しかし、私は微動だにしなかった。ただ静かに、その瞬間を待っていたのだ。「離婚には同意するわ。でも、莉花はあんたにくれてやる」 その言葉で夫の顔色が一変した。彼は知らなかった。私が持っている、たった一つの切り札を。 CTA:...

「1億円だ!1億円当たったぞ!」

リビングに響き渡る、夫・信吾の下品な雄叫び。彼は安っぽい馬券を宝物のように掲げ、テーブルを叩きながら狂ったように笑っている。

「聞けよ!俺、あの糞みたいな会社辞めてきたからな!ムカつく上司の顔に辞表叩きつけてやったぜ!」

私の冷めた反応に一瞬だけ顔を歪めた信吾は、しかしすぐに勝ち誇った笑みを浮かべ、こう言い放った。

「お前とは離婚だ。ババアとの生活は終わりだ。慰謝料代わりにこの古臭い家をくれてやる。だからさっさと莉花を連れて出て行け。貧乏臭い顔は二度と見せるな」

全ての暴言を吐き終え、勝ち誇る夫。しかし私は微動だにしなかった。ただ静かに、その瞬間を待っていたのだ。

そして、冷徹な声でゆっくりと言い放った。

「離婚には同意するわ。でも、一つだけ勘違いしないで。莉花は、あんたに育てさせるわ」

その瞬間、男の顔色が一変した。

私の名前は山崎あけみ。夫の信吾とは同じ職場で出会い、恋愛の末に結婚した。この人となら穏やかで幸せな家庭を築けると、当時は本気で信じていた。しかし、その幻想は結婚生活が始まると同時に、音を立てて崩れ去った。

信吾の金銭感覚は、結婚前からすでに歪んでいたのだ。

「信吾さん、少しずつでも将来のために貯金しない?」

「はあ?貯金?そんなちまちましたことして何になるんだよ。金ってのはな、パーッと使ってこそ価値があるんだ」

彼は給料の大半を競馬とパチンコに注ぎ込み、週末はいつも家を空けていた。そんな夫を、義母の愛子さんは叱るどころか、むしろ褒めそやす始末だった。

「信吾は本当に男らしくて素敵ね。細かいことを気にしない器の大きい男よ」

やがて娘の莉花が生まれたが、信吾の自己中心的な態度は微塵も変わらなかった。おむつ替えも夜泣きの対応も全て私任せ。彼は指一本動かそうともしなかった。

私が育児に追われ、疲弊し切っていると、彼は信じられない言葉を投げつけた。

「おい、莉花が泣いてて競馬中継が聞こえねえだろ。早く黙らせろよ」

結局、私は心身ともに限界を迎え、育児休暇を取っていた会社を辞めざるを得なくなった。

そんなある日、信吾が突然、同居を提案してきた。

「おふくろが莉花の面倒を見るって言ってるし、お前にとっても好都合だろ」

義母の愛子さんも満面の笑みで約束した。

「ええ、可愛い莉花ちゃんのためなら、何でも手伝うわよ」

私はこの提案に、かすかな希望を託してしまったのだ。

しかし、義母との同居生活は、私の淡い期待をすぐに裏切った。莉花がまだ幼かった頃、愛子さんが育児を手伝ってくれたのは、本当に最初の数日だけだった。

「あら、ごめんなさいね。今日は腰が痛くて、莉花ちゃんのことお願いできるかしら?昨日、少し無理をしすぎたみたいで。今日は一日横になっていたいわ」

口を開けば体調不良を訴える。結局、家事も育児も全て私の肩にのしかかった。状況は同居前と何も変わらず、むしろ気を遣う相手が増えただけの日々が続いた。

そんな時だった。信吾が競馬で大金を当てたのは。

「莉花は私が引き取る。あなたには育てられないものね」

私が冷たく言い放つと、信吾は慌てて反論した。

「はあ?何言ってんだよ。お前、金もないのに莉花を育てられるわけないだろ!」

しかし、私は持っていた。信吾が知らない、たった一つの切り札を。

「信吾さん、あなたの携帯見せてくれる?」

「は?何でだよ」

「いいから見せなさい」

私の迫力に押され、信吾はしぶしぶスマホを差し出した。私は素早く操作し、ある1本の動画を再生した。

画面には、信吾が同僚と飲んでいる場面が映っている。酔った彼は、同僚の上司について悪態をつき、こう言っていた。

「あの上司、絶対に許さないからな。黒い金、隠してるんだ。あいつをハメてやる方法、もう考えてあるんだ」

私は動画を一時停止し、信吾を見つめた。

「この動画、会社の人事課に送ろうかしら。あなたが首になった後、どこの会社が雇ってくれるかしらね?競馬で得た配当だけじゃ、莉花を育てるのは難しいと思うけど」

信吾の顔色が、見る見るうちに青ざめていく。

「お前…どこでそんな動画を…」

「知り合いがあなたと飲んでいたらしくてね。結構面白い話を聞かせてもらったわ。この動画以外にも、いろいろ送ってもらってるのよ」

勝ち誇っていた男の表情が、恐怖に歪む。私は畳み掛けた。

「離婚条件を変えるわ。この家は私がもらう。養育費は月20万円。それと、あなたが私と莉花にしたこと、全部実家のご両親に話してもらうわ」

「なっ…!」

「拒否する権利はないわよ。この動画が職場に送られたら、あなた、ただじゃ済まないんだから。それに、莉花の養育費を払えないような男が、世間様に『一億円当てたから離婚する』なんて言えると思う?」

信吾は歯を食いしばり、何も言えなくなった。

「一億円分の幸せ、しっかり味わわせてもらうわよ。あなたには、借金だけ残してね」

私はそう言って、スマホをしまった。勝ち誇っていた男の顔は、今や真っ白だ。

数日後、私たちは離婚した。信吾は約束通り、毎月養育費を払っている。だが、金銭感覚が壊れた男が、競馬場に行くのをやめるはずがない。給料と養育費で生活は苦しくなり、やがて彼は金を借り始めたという噂を聞いた。

一方、私は家を売り、莉花と二人で新しいマンションに引っ越した。貯金も慰謝料もない。しかし、あの家から出られたことで、ようやく本当の自由を手に入れた気がしたのだ。

ある日、莉花が不安そうに聞いてきた。

「ねえ、ママ。パパはどうして来ないの?」

「莉花、パパはね、自分の選んだ道を歩いているのよ。ママは莉花と二人で生きていく道を選んだの。それだけよ」

私は莉花を抱きしめた。信吾は今頃、金に溺れて転げ回っているのだろう。しかし、それはもう私の知ったことではない。

一億円の賞金は、結局彼に不幸しかもたらさなかった。自業自得とはまさにこのことだ。私は莉花と二人、静かで穏やかな幸せを噛みしめるのだった。

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