「そんなに文句があるならやめればいいじゃないか。」…

「そんなに文句があるならやめればいいじゃないか。」...

「そんなに文句があるならやめればいいじゃないか。」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが固まった。もうここまで言われて、これ以上続ける意味なんて見いだせない。それなら、部長の提案に乗るべきなのかもしれない。

俺は決意を固めた。

「それでは、やめさせていただきます。」

そう部長に伝えた。すると部長は、みるみるうちに顔を輝かせながら言った。

「ちゃんと大口契約については俺が引き継いでやるから。今後のお客様とのやり取りも全部俺が報告する。」

俺の名前は大輔、40歳。大手不動産会社で営業課長を務めている。大学時代はラグビーに全力を注ぎ、フィールドを駆け抜ける日々を送っていた。正直言って、頭の良さで勝負できるタイプではない。だが俺には俺なりの武器がある。それは、どんな時も周囲を明るくし、絶えず努力を続けて成果を出すという姿勢だった。これが俺の持ち味であり、この会社で着実に結果を積み上げてきた理由でもある。

「先輩、ロープレお願いします。」

入社当時から、契約を取ってきた先輩や同僚のところへ真っ先に成功事例を聞きに行き、積極的に動いていた。しかし、何事も順調だったわけではない。

「そのやり方はおかしいと思いますよ。お客様にとってのメリットが見当たりません。」

俺の性格は、他人の意見を尊重する一方で、自己主張が強く、自分の信念を曲げることができないタイプだった。そのせいで上司や同僚と衝突することもあった。しかし、その裏表のない姿勢は、時に信頼を勝ち取ることにもつながった。

「相手が誰であれ、自分の意見をはっきりと伝えることが大切だ。」

それが俺の正義感だった。

「佐藤君、今日も冴えてるね。君みたいに正義感が強い子は今時なかなか珍しいよ。ぶつかることもあるだろうが、そのままの君で頑張ってくれ。」

そう言ってくれたのは清田部長だった。若い頃からお世話になっていて、俺のことを認めてくれていた。関係は良好で、清田部長の存在は俺のキャリアにとって重要な支えだった。

部長と今後もずっと長く働きたいと思っていた。だが、そうはいかなかった。会社という場所は常に流動性があるものだ。人事移動の時期になり、清田部長は統括部長に昇進した。さすが清田部長だ。いや、清田統括部長だ。お世話になった人で、仕事もできる。この人事移動に異議を唱える者はいなかった。

清田部長が統括部長に昇進し、部長の席が空いた。そこに新しく就任したのが、松本部長という人物だった。

統括部長は各部の部長を統括する役職なので、清田統括部長とは今までのように頻繁に関わることはできなくなった。寂しかったが、俺は心から昇格を祝った。

「統括部長昇格、おめでとうございます。統括部長と距離が離れてしまうのは非常に寂しいですが、僕も教えていただいたことを忘れずに頑張ります。」

「佐藤君、ありがとう。君も頑張れ。何かあったら必ず来なさい。」

俺は早く部長に昇格し、少しでも統括部長に追いつくことを決意した。

新しい松本部長はというと、他の不動産会社からヘッドハンティングされてきたらしく、何やら評判はあまり良くなさそうだった。俺は気を張って、松本部長の就任初日に備えた。

そして、その日が訪れた。松本部長の初日。彼が一歩事務所に足を踏み入れた瞬間、その雰囲気は明白だった。

「ああ、今日からここの営業部長に配属された松本です。どうぞよろしく。」

挨拶は一言二言で済ませ、部長席にどっしりと座り込み、周囲に対して威圧的な態度を見せ始めた。その瞬間、部下たちの表情は一変し、事務所内は一気に静まり返った。まるで時間が一瞬止まったかのように。

その後も松本部長は、部下の意見を聞かず、自分の考えを押し付けるだけの毎日が続いた。俺は反発したが、松本部長は冷たくあしらうばかりだった。ついに俺は耐えきれず、松本部長と正面からぶつかることになった。

「佐藤君、君のやり方は時代遅れだ。この部署では俺の方針に従ってもらう。」

「松本部長、でもお客様のことを考えれば……」

「お客様? そんなのは結果が出てから言え。結果を出せないやつに、ここでとやかく言う資格はないんだよ。」

その言葉に、俺は返す言葉を失った。俺が必死に努力してきたことは無駄だったのか。いや、それよりも、松本部長の意図が全く読めなかった。どうやら松本部長は、俺を辞めさせようとしているらしい。試しに、松本部長の過去を調べてみることにした。すると、驚くべき事実が浮かび上がってきた。松本部長は、前の会社でも同じことを繰り返していた。部下を追い詰め、辞めさせては、実績を自分のものにする。それが彼のやり方だったのだ。

俺は腹が立ったが、冷静になることにした。そんなことをすれば、怒りに任せて今まで通り独り立ちで対抗しても、結果は同じだろう。松本部長の思い通りになるだけだ。俺は作戦を考えた。彼のやり方を見破って、みんなの前で白黒つけてやる。俺の中で、静かな決意が芽生え始めていた。

だが、松本部長は容赦がなかった。ついに、俺が長年担当してきた大口契約を、他の営業に奪われた。松本部長が裏で俺の悪評を流していたのだ。

「どうして俺が……」

俺は失意の中で、松本部長に直接詰め寄った。

「なぜ私の契約を奪ったんですか?」

「奪った? それはこちらのセリフだ。お前の営業成績はここ数年、伸びてないだろう。この会社は実績主義だ。お前にはもう、その資格がないんだよ。」

「そんな……俺はずっとこの会社のために尽くしてきたのに……」

「尽くす? それはお前が勝手に思ってるだけだ。お前のやり方はもう通用しないんだ。」

俺は、感情が爆発しそうになるのを必死に抑えた。こんな理不尽なことがあるだろうか。長年、誠実にやってきた俺が、なぜこんな扱いを受けなければならないのか。俺は何も言い返せないまま、その場を離れた。

悔しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。だが、その涙が乾いた時、俺の中に一つの確信が生まれた。

「もう、こんな会社のために働くことはない。それよりも、松本部長の本性を暴いてやる。」

俺はそう心に決めた。松本部長がこれまでにやってきたことをすべて調べ上げて、立証するつもりだ。そして、会社の前で、この男の真実を曝け出す。きっと、自分にとって大きな決断になるはずだ。

松本部長に辞職を伝えた後、俺はすぐに動き始めた。松本部長の過去の事例を調べるために、彼が以前勤めていた会社の人間に接触した。そして、彼が前の会社で一体何をしていたのか、証言を集め始めた。すると、予想通り、松本部長が前の会社でも同じように部下を追い詰めていたという証言が次々と集まってきた。

「こいつは、とんでもない男だな。」

俺は確信した。松本部長のやり方を止めるには、何としてでも証拠を揃えなければならない。そして、俺は行動を起こした。会社の上層部に電話を入れ、松本部長の過去の事実を報告した。上層部の反応は、まさかというものだった。

「本当ですか? それは重大なことですね。」

「はい、私が証言できる人間も見つけました。すぐにでも確認してください。」

上層部は、俺の話を真剣に受け止めてくれた。社内調査が始まり、松本部長の暴走はついに止まることになった。松本部長は、会社を辞めることになった。

「佐藤君……お前の言う通りだった。」

松本部長は、最後にそう言って姿を消した。

俺は、晴れやかな気持ちだった。俺は、自分の信念を貫き通した。そして、会社からも信頼を取り戻すことができた。

「これからも、自分を信じて、正しい道を歩んでいこう。」

そう心に誓って、俺は新たな一歩を踏み出したのだった。

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