先輩社員が「君は僕の企画を盗んだね」と叫んだ瞬間、俺は犯人になった。同じ企画部なのに、彼の言葉が信じられ、俺の言葉は誰にも届かない。唯一かばってくれた女性だけが「そんなことする人じゃない」と泣いてくれた。だが、結局俺は左遷されてしまう。「このままあなたと会えなくなるのは嫌」と彼女が言った時、俺は決めた。もう逃げない。その翌日、会議室で俺は見た——剣さんが俺の企画を自分のものとして発表する姿を…

先輩社員が「君は僕の企画を盗んだね」と叫んだ瞬間、俺は犯人になった。同じ企画部なのに、彼の言葉が信じられ、俺の言葉は誰にも届かない。唯一かばってくれた女性だけが「そんなことする人じゃない」と泣いてくれた。だが、結局俺は左遷されてしまう。「このままあなたと会えなくなるのは嫌」と彼女が言った時、俺は決めた。もう逃げない。その翌日、会議室で俺は見た——剣さんが俺の企画を自分のものとして発表する姿を...

先輩社員が「君は僕の企画を盗んだね。本田君」と叫んだ瞬間、俺は周囲から犯人扱いされた。同じ企画部にいながら、彼への信頼と俺への視線は天と地ほど違う。あの人はそんなことする人じゃないと、唯一の女性だけが俺をかばってくれた。だが虚しく、俺には左遷の辞令が下った。
「このままあなたと会えなくなるのは嫌」と彼女が涙を流した時、逃げ続けてきた俺の心に火がついた。絶対にこのまま終わるかと、俺は変わることを決意した。

俺の名前は本田志馬、28歳。とあるパンメーカーの企画部で働く。高卒の俺が、大卒だらけの企画部にいるのは異例だった。働き始めて1年、浮かない日はない。
「本田君、企画書は完成した?」背後から声をかけられ、振り返ると先輩社員の剣大輔さんが笑顔で立っていた。「チェックしてあげるよ」と言われ、断れずに企画書を渡す。いつもの流れだ。
「うん、全然ダメだね」
「全然ですか?」
「ほら、この辺りとか。どの層をターゲットにしてるのか分からない」
「子供からお年寄りまで美味しいパンがコンセプトで……」
「ダメダメ。そんなの売れないに決まってる。会議通りっこないよ」
ニコニコしながら、剣さんは俺の企画を次々に否定していく。最後には決まってこう言った。
「やっぱり大学くらい出てないと企画は難しいのかな? 冗談だよ。ま、本田君は高卒の星なんだから、ここでやめずに頑張りなよ」
肩を抱かれ、耳元で囁かれる。表向きは親切だが、彼が高卒を面白がっているのは誰の目にも明らかだった。結局、俺の企画はボツになり、翌日の会議は見学になった。
「はい、ありがとうございました」
「気にしないで。後輩の面倒を見るのが先輩の役目だから」
俺の企画書を持って、剣さんは上機嫌で去っていく。あの企画書を何に使うのか、想像はついた。

翌日の会議。剣さんが俺の企画を自分のものとして発表するのを、俺は隅で縮こまりながら聞いていた。彼は堂々と「このコンセプトは子供からお年寄りまで美味しいパンです」と語る。会議室の誰も気づかない。いや、気づいていても何も言わない。
その日の夜。残業で会社に残ったのは俺だけだと思っていた。だが、8時を過ぎた頃、誰かの気配がして振り返る。
「わっ、びっくりした……なんで嬉しそうなんですか?」
そこには笑顔の主任が立っていた。「企画、結構上手かったでしょ? 私が書いたんだよ」
意味が分からず固まる俺に、主任は続ける。「あの企画、本当は君が考えたものだよね。いい企画だと思うよ。僕なら即座に商品化を決める」
「そんなにですか?」
「もっと自信を持ちなよ。君はアシスタントじゃない。企画者だ」
主任の言葉に、俺の中で何かが崩れ落ちた。ずっと否定されてきた俺の企画が、初めて誰かに評価された。だが、同時に剣さんの顔が頭をよぎる。あの企画を盗まれたまま黙っているのか。
主任は続けた。「君が逃げてきたの、分かってるよ。でも、もう逃げなくていい。次は君が発表しなさい」
俺は拳を握りしめた。逃げ続けてきた自分を、ここで終わらせる。

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