吹雪の夜、玄関のチャイムが鳴った。扉を開けると、孫のはやとが一人で立っていた。こんな時間に、こんな天気の中、どうして。
「はやと、どうしたの?」
「まきが家で熱を出してぐったりしてて……でもお金がなくて」
はやとの家から我が家までは、歩けば二時間はかかる距離だ。小さな子供がこんな夜中に、なぜこんなことをしているのか。母親は一体何をしているのだろう。普段から子供に対して放任主義の嫁、みかへの怒りが込み上げてくる。
「お母さんは?」
「お母さんは……えっと……」
「まずはまきを病院に連れて行かなくちゃ。だからお金を貸してほしいの」
はやとを家に上げようとしたその時、家の奥から夫が飛び出してきて、怒鳴った。
「三万円? 貸すわけないだろう」
私は夫が怒鳴るのをほとんど見たことがなかった。それに、事情も聞かずに、この吹雪の中を歩いてきた子供に向かって怒鳴りつけるなんて。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「帰れ」
夫はそう言うと、はやとを玄関から追い出してしまった。扉が閉まる音が響く。
「ちょっと、それはないでしょう! まずは家に上げて話を聞いてあげたらどうなの? こんなに必死な孫を追い返すなんて」
夫がこんな冷たい人間だったなんて信じられなかった。はやとがこんなに必死になっているのに、わけが分からず再び夫を見ると、彼はにやりと笑っていた。
そう、夫は知っていたのだ。はやとがなぜ今、このような状況になっているのかを。
私の名前は幸恵。夫と二人で暮らす六十二歳の専業主婦だ。北海道の田舎町で生まれ、ずっとこの土地で生活してきた。冬の雪かきは毎年の日課で、六十を過ぎても夫は会社に残り、後輩の指導をしている。人手不足のいま、経験豊富なベテランは定年を過ぎても契約社員として働いているのだと夫は言っていた。仕事好きな夫は、毎日楽しそうに出かけていく。
私たちには息子が一人いる。裕介という。小さい頃から優しくていい子に育ち、地元の国立大学を卒業して、そのまま地元の大手企業に勤めている。自慢の息子だ。
そんな裕介は七年前、五歳年下の女性と結婚した。みかという。元気な六歳の男の子、はやとと、可愛い三歳の女の子、まきの二人の子供がいる。一家は私たちの住む家から車で一時間ほどの距離に家を借りて住んでいた。たまにしか会えないのは寂しいけれど、二人の孫に会うことが今の私たちの生きがいだ。
裕介が結婚したのは三十歳の時だった。仕事一筋で真面目すぎるのがたまに傷で、女性との出会いがなくて心配していたのは、ここだけの話だ。
そんな裕介が「彼女を紹介したい」と言ってきた時は、ついにその時が来たと嬉しくなった。結婚を前提に付き合っているとのこと。どんな彼女を連れてくるのかと楽しみに迎えた週末。
「こちら、彼女のみか。よろしくね」
「どうも」
みかさんは裕介の五歳年下で、綺麗な顔をしているけれど、髪は明るく、しっかりメイクをしているタイプだった。ただ気になったのは、その話し方だった。
「裕介とはどこで知り合ったの?」
「ああ、マッチングアプリで」
裕介がマッチングアプリをしていたなんて。正直、驚いた。友人に相談したところ、今はそういった出会いの方が多いのだと言われ、試しに使ってみたのだそうだ。確かに田舎だと出会いの数自体が少ないから、効率がいいのかもしれない。
でも、連れてきた相手が本当に裕介に合っているのだろうか。何かとそっけないみかさんは、私との会話を楽しむつもりがまったくないようだった。若い世代はこんなものかと考えようとしたけれど、挨拶も満足にできず、お世辞にも礼儀正しいとは言えなかった。緊張しているだけかもしれないと必死に話題を振ってみたけれど、反応はいまいちだった。
「裕介のどこを好きになってくれたの?」
「うーん。稼ぎ」
さすがに冗談だと思って苦笑いを返したけれど、なんだか居心地が悪くなった。その後の会話もすべて空振りに終わり、みかさんは数十分ほどで席を立ち、
「この後友達と会う約束があるから、もう帰ります」
と言い残して、そのまま帰ってしまった。
みかさんが帰った後、私は裕介に尋ねた。
「ゆう介、マッチングアプリなんてやっていたのね。みかさんとはいつ頃出会ったの?」
「三ヶ月前かな」
想像よりも交際期間が短くて驚いた。三ヶ月で結婚するなんて、大丈夫なのだろうか。
「みかさんのこと、よく分かっているのよね?」
「心配するなって。俺が選んだんだから大丈夫だよ」
裕介が選んだからこそ心配なのだ。何せ女性経験がろくにないのだから。しかし裕介は照れながら続けた。
「俺ももう三十だろ。そろそろ孫の顔を見せなきゃなってさ」
それを聞いて、私は少し感動した。そんな風に考えていてくれたなんて。本当はみかさんについて苦言を言うつもりだったけれど、裕介が選んだ相手なら信じることにした。
それが間違いだったことを、この後思い知らされることになる。
結婚した後、みかさんと会ったのは片手で数えるほどだった。子供の出産祝いやお祝い事だけ。実はみかさんは早くに母親を亡くし、父親に育てられたそうだ。父親ともあまりうまくいっていなかったようで、中学生の頃には家に寄りつかなくなり、遊び歩いていたのだという。両親の愛情を知らずに育ったみかさんにとって、家族というものはそれほど大切にできるものではないようだった。
どうも私たちは避けられているらしい。一家と同じ町に住んでいたから、たまにスーパーで会った時も、みかさんは結婚挨拶の時よりも明らかに派手な服装にメイク、それに強い香水の匂いを漂わせていた。
「はやと君とまきちゃんは元気? また遊びに来てちょうだいね」
「ああ、私用事あるんで」
私はあくまでにこやかに孫のことを尋ねたけれど、みかさんはほとんど会話もせず、逃げるように去っていった。こんなことでやっていけるのだろうか。まあ、裕介や子供たちとうまくやっているのなら問題ないか、と自分を納得させることもあった。
みかさんと会うことは少なかったけれど、裕介は時間さえあれば孫二人を連れて遊びに来てくれていた。ある日曜日、いつものようにはやととまきを連れてきてくれた裕介に、私は尋ねた。
「裕介、みかさんとはうまくやってる?」
「ああ」
いつも明るいはずの裕介が、心なしか元気がないように感じた。
「何か困っていることがあったら、いつでも言ってちょうだいね」
裕介は少し考え込むようにして、子供たちの方を見た。
「実は、ちょっと気になってることがあって……」
「パパ、見て!」
子供たちが元気に裕介に駆け寄ってきた。裕介も笑顔で答える。子供たちは本当に裕介によくなついている。さすがに無邪気な子供の前で母親の悪口は言えない。この子たちが元気でいられれば、それだけでいいのだ。そう思って、私はそれ以上聞くのをやめた。
あの時、もっと気にかけていれば、孫たちにあんな思いをさせることはなかったのに。
それから裕介の転勤が決まり、一家は隣町へ引っ越した。それがきっかけで、息子一家とは少し遠くなってしまった。以前はしょっちゅう電話をしていたけれど、今は仕事が忙しいようでなかなか繋がらない。たまにみかさんにも電話をしてみるけれど、もちろん出てくれなかった。孫たちともなかなか会えなくなってしまい、少し寂しい思いをしていた。
息子が引っ越して数ヶ月が経った頃、ある日信じられないことが起こった。午前中、はやとの通う学校から電話がかかってきたのだ。
「おばあ様ですか? はやと君が体育の授業中に倒れまして」
「え、はやとが?」
「お母様とは連絡がつかず……遠いところ申し訳ないのですが、学校まで来ていただけますか?」
私は慌てて夫に電話をかけた。
「あなた、はやとが学校で倒れたって」
「分かった。仕事は後輩たちに任せてすぐ向かうから、落ち着いて」
夫はこんな時、本当に頼りになる。心から孫を心配しているのが伝わってきた。私たちは夫の運転する車で急いで隣町の学校へ駆けつけた。
はやとはぐったりとした様子で、保健室のベッドに横たわっていた。今年小学校に上がったばかりの小さな体が、さらに小さく見えた。
「はやと、おばあちゃんよ。分かる?」
「うん。おじいちゃん、おばあちゃん、来てくれてありがとう」
はやとは辛そうに声を絞り出しながらも、私を見てほっとしたような笑顔を見せた。
「先生、はやとはどうして倒れたんですか?」
体育の時間、外でマラソンの練習をしていたところ、急にふらつき始めてその場に座り込み、倒れ込んでしまったのだそうだ。見た感じ外傷はなく、その点は安心したけれど、一体何があったのだろう。心配になりながら尋ねると、保健の先生は予想外の言葉を口にした。
「軽い栄養失調と思われます」
栄養失調。思わず耳を疑った。可愛い孫が栄養失調で倒れたなんて、信じられない。
「そこまで深刻なものではありませんが、栄養が足りていないのは確かです」
保健の先生は心配そうな面持ちで私たちを見た。私は夫と顔を見合わせた。一体何が起きているのか。裕介が引っ越しをしたことによって、はやとが通う学校も変わった。転校してきたばかりのはやとのことを先生たちもまだよく分かっておらず、突然のことに驚いていた。想像していたよりも一回り小さく痩せ細っているように感じたのは、そのためだったのだ。
結局、母親のみかさんとは連絡がつかず、私たちは一旦はやとを家へ連れて帰った。栄養失調だといきなりご飯を食べすぎるのも良くないと聞いたことがあるので、私は卵のおかゆを作って、少しずつはやとに食べさせた。
「おいしい」
ゆっくり味わうようにおかゆを食べるはやと。まだ信じられない気持ちのまま、私ははやとを見つめる。
「ねえ、はやと。最近、ご飯食べられてないの?」
「うん、大丈夫だよ。ちょっとお腹減ってただけ」
はやとは私の方を見ず、俯いたまま小さな声で答えた。
「本当に何を言っても怒らないから、何でも話してみて」
はやとはスプーンを持つ手を止め、しばらく沈黙した。
「大丈夫。おばあちゃんははやとの味方よ」
はやとは何かを言おうと少し口を開いたけれど、言葉が浮かばないようで、また口を閉じてしまった。そこで私は具体的に聞いてみることにした。
「今日の朝ご飯は、何を食べたの?」
「食パン。食パン、美味しかった」
「どんな食パン?」
「味のしないやつ。バターとかジャムとか、おかずは何にも」
「パンは何枚食べた?」
「一枚だけ」
朝ご飯が食パン一枚ということも、ありえない話ではない。でも嫌な予感がした。
「はやと。昨日の夜ご飯は?」
私ははやとの目をしっかり見て、少し力を込めて尋ねた。
「同じ」
「え、食パン一枚?」
まさか。さすがにそれはありえない。一体なんてことだ。
「……お母さんを怒らないで」
呆然とする私に、はやとは涙が滲むようにして声をかけた。母親を気遣っているのか。なんて優しい子なんだろう。みかさんにも事情はあるかもしれないが、当然黙って見過ごすわけにはいかない。
ただ、これ以上はやとを不安にさせるわけにはいかない。
「大丈夫。大丈夫よ」
半ば自分に言い聞かせるように、私ははやとに声をかけた。
その後、私たちははやとを車に乗せて裕介の家に向かった。家に着くと、みかさんはもう帰ってきていた。
「みかさん、帰っていたのね。どうして連絡をくれなかったの?」
「ああ、友達とカラオケに行ってて、気づきませんでした」
カラオケ。私は目まいがする思いがしたけれど、みかさんは悪びれる様子もない。まさかここまでひどい人だったなんて。
「それに、子供たちにちゃんとご飯を食べさせているの?」
みかさんは黙ったまま、はやとの方を見る。はやとは怯えたような顔をしていた。私は先ほどのはやとの「お母さんを怒らないで」という言葉を思い出す。はやとの前でこれ以上追求するのは良くないかもしれないと思ったけれど、みかさんは大きなため息をついて話し始めた。
「食べさせてますけど。足りないなら、裕介の稼ぎが少ないのがいけないんじゃないですか? 妻として節約してるんですよ」
「何を言っているの?」
その時、裕介が帰ってきた。まだ昼前だったけれど、はやとのことを聞いて、なんとか仕事を調整して急いで帰ってきたのだろう。
「はやと、大丈夫だったか?」
「パパ!」
はやとはみかさんに会った時とは違い、ぱっと明るい笑顔になった。おばあちゃんちでご飯を食べたよ、と楽しそうに話している。
「そうか。良かったな」
裕介がはやとに笑顔を向けると、今度はみかさんの方を向いて低い声を出した。
「さっきの言葉、聞こえていたぞ。生活費はちゃんと渡しているだろう」
「だから足りないんだって」
そんなやり取りを聞いていたら、夫が私にアイコンタクトを送ってきた。これ以上、はやとに聞かせるわけにはいかないと思ったようだ。私ははやとを連れて、近所の公園へ出た。
晩ご飯が食パン一枚だなんて、さすがに異常だ。これは立派な虐待なんじゃないか。何より、倒れてしまうほどお腹を空かせていたはやとが可愛そうでならない。この先どうしたらいいのか、不安で胸がいっぱいになった。
その後の展開は、夫から聞いた。夫と裕介はみかさんをしっかり叱ってくれたようだ。それを聞いて、少しほっとした。
「まさかあんなことになっていたなんてなあ」
「みかさん、心入れ替えてくれるかしら?」
「あまり期待はできないな」
しかし夫は、にやりと笑った。
「何?」
「まあ、俺と裕介でなんとかするから、心配するな」
それから一ヶ月後、ある冬の夜。その日は一日中吹雪だった。
ピンポン。玄関のチャイムが鳴った。こんな時間に誰かしら。扉を開けると、はやとが一人で立っていた。
「はやと、どうしたの?」
「まきが家で熱を出してぐったりしてて。でもお金がなくて」
「え、お母さんは?」
「お母さんは……えっと」
はやとは言葉を濁す。まさかまた子供を放って、遊び回っているのか。
「まきを病院に連れて行きたくて。だから、お金を貸してほしいの」
はやとは俯いたまま繰り返す。
「お金、三万円。貸してください」
すると夫が奥から出てきて、はやとに向かって怒鳴った。
「三万円? 貸すわけないだろう」
私は夫が怒鳴るのをほとんど見たことがなかった。それに孫に向かってこんなことを言うのは初めてだ。事情も聞かず、こんな吹雪の中を歩いてきた子供に。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
はやとは今にも泣き出しそうだ。
「帰れ」
夫がそう言うと、はやとは本当に玄関から出ていってしまった。
「ちょっと、それはないんじゃないの? まずは家に上げて話を聞いてあげて」
私は夫を問い詰めた。すると夫はにやりと笑った。
「まあ、任せておけ」
何か私の知らないことを知っている時の顔だった。
「はやとの手を見たか?」
「手がどうしたの?」
「スマホを持っていた」
「スマホ?」
はやとには小学校の入学祝いで子供用のスマホをプレゼントしていたけれど、それだろうか。
「でも、スマホがどうかしたの?」
「あれはおそらく、みかさんと通話中になっている」
母さん、どうして話についていけないの。私をよそに、夫はドアを開けた。はやとは門から出て行こうとしているところだったが、音が開いたことに気づいて振り返った。夫は手振りで、はやとに何かを伝えている。どうやら通話が切れているか確認しているようだ。
はやとが頷くと、夫は手招きしてはやとを呼び寄せた。
「さっきは怖い声を出してごめんな。でも、もう大丈夫だぞ」
夫はそう言って、はやとを抱きしめた。
私たちははやとを車に乗せ、裕介の家へと向かった。家に着くと、みかさんも自宅にいた。まきは元気に遊んでいる。
「まきちゃん、元気だったのね。よかった」
体調不良ではなかったのだ。でも、じゃあどうしてはやとはうちに来たのだろう。
夫は険しい顔で、みかさんに声をかけた。
「みかさん、あなたははやとに何をさせました?」
夫の口調は穏やかだったが、かなり怒っている。
「何って? 何も知らないけど」
「嘘をつくな。あんな寒い中、真夜中に子供一人で何かあったらどうするつもりだったんだ?」
「いや、私のせいじゃ……」
「まだ言い訳する気か? あなたが何をしていたかは、全部分かっているんだぞ」
一瞬、みかさんの体がぴくりと動いた。
「まず、はやとに指示して金を騙し取ろうとしただろう」
「え?」
私は思わず声が出た。信じられない思いがしたけれど、今まで抱いていた違和感が一気に繋がった気がした。申し訳なさそうなはやと。通話中のスマホ。それらが意味していたのは、そういうことだったのだ。
「はあ? 何言ってるの?」
みかさんはなおも否定するが、そこに裕介が帰ってきた。
「ちょっと、裕介。助けてよ」
しかし裕介は、冷たい視線をみかさんに向けた。
「それだけじゃないぞ」
「え、何言ってるの?」
みかさんは不安げな顔で裕介を見る。
「お前、浮気しているだろう」
「はあ? 何言ってんの? 親子揃って頭おかしくなったんじゃない?」
みかさんはほとんどヒステリー状態になっている。
「これを見ろ」
裕介はスマホの映像をみかさんに見せた。私たちからは見えなかったが、浮気の証拠が映っているのだろう。
「お前が子供たちにちゃんとご飯を与えているか心配だったからな。部屋にカメラをつけたんだ。それがまさか、知らない男を連れ込んでいるとはな」
決定的な証拠を突きつけられたみかさんは、唸るように黙り込んだ。諦めたみかさんは、本当のことを話し始めた。結婚後もマッチングアプリで出会った男性と浮気を繰り返していたこと。子供の分の食事代も使って遊び回っていたこと。それでもお金が尽きて、ついにははやとを使って私たちから金を騙し取ろうとしたこと。はやとも悪いことだと思いながらも、母親に怯えて従わざるを得なかったようだ。
「離婚する。それから今回のことは、警察にも連絡するから」
「警察って、なんでよ」
「俺の親から金を騙し取ろうとしたんだからな。当然だろ。子供への虐待だって犯罪だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。さすがにそこまでしないでしょ。ねえ」
「自分の犯した罪の重さを反省しなさい」
そして裕介は本当に警察に連絡し、みかさんは連れて行かれた。
それからしばらくして、無事に裕介とみかさんの離婚が成立した。みかさんは最初から裕介の年収だけを見て近づいたらしい。裕介は慰謝料を請求した。みかさんは浮気相手にも愛想を尽かされ、頼る相手もなく、遊ぶ暇もなく低賃金で働いているらしい。
裕介も今回の件は相当ショックだったようだ。
「俺が仕事ばかりしていたのも、悪かったんだ。それに見る目もなかった。みかがあんなやつだったなんて」
「そんなことないわ。今回のことは仕方なかったのよ。悪いのは全部みかさんなんだから」
やがて裕介も元気を取り戻したけれど、やはりショックだったのか、仕事を変えることにした。そしてなんと、夫と同じ職場で働くことになったのだ。当然、彼も裕介が取った。
そして私たちは、今では家族五人で仲良く暮らしている。
「ねえ、おばあちゃん。これ見て」
「あら、はやと。綺麗なお花ね」
はやととまきには辛い思いをさせた分、これからたくさん幸せになってほしい。そう願わずにはいられない。
