ドイツで3年間働き、毎月欠かさず50万円を家族に送金していた。1800万円。それだけあれば、妻と娘が不自由なく暮らせているはずだった。成田空港に降り立った時、俺の胸は期待と喜びで溢れていた。愛する妻と、中学生になったばかりの娘の笑顔が、慣れない異国の地で俺を支え続けてくれたのだ。
だが、玄関を開けた瞬間、俺の世界は崩れ去った。かつてのぬくもりはどこにもなく、暖房も入らない冷え切った廊下。リビングのテーブルで、妻と娘が食べていたのは、おかず一つない白いご飯に塩をかけただけのものだった。
「エリ、どういうことだ? これは…送金はどうしたんだ?」
俺の問いかけに、エリは箸を止め、ゆっくりと顔を上げた。以前よりひどく痩せこけ、目は光を失っていた。娘のユマも、俺と目を合わせようとせず、小さくなって震えている。
「お母さんに…お母さんに聞いて。私たちは1円ももらっていないの」
その瞬間、俺の頭の中で何かが音を立てて崩れ去った。俺が死に物狂いで稼いだ金は、一体どこへ消えたのか。俺はまだ知らなかった。自分の母親が、これほどまでに残酷な化け物に変貌していたなんて。エリの言葉を聞き終えると、俺は静かに、しかし燃えるような怒りを胸に、真実を暴く決意を固めた。
「エリ、全部話してくれ。何があったのか、一言もらさずに」
俺の声は、自分でも驚くほど低く冷たく響いた。エリの目から大粒の涙がこぼれ落ち、その涙がこれまでの3年間の苦しみを物語っているようだった。俺が守るべきだった家族が、俺の不在の間にボロボロに壊されていた。その事実に、俺の心は激しく波打っていた。
「まさか…母さんが…」
俺は拳を強く握りしめた。もし俺の想像している通りだとしたら、例え身の親であろうと、俺は決して許すつもりはなかった。俺の、そして家族の3年間を奪った者たちに、応報の報いを受けさせる。物語はまだ始まったばかりだ。
「そういうことか…全部わかった。母さん、お前の仕業か」
翌日、俺は実家へと向かった。インターホンを押すと、母は相変わらずの態度で出てきた。しかし、俺の口調はこれまでと全く違っていた。
「母さん、1800万円はどこにあるんだ?」
母は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにふんぞり返って言い放った。
「あんたがドイツで贅沢している間、私たちはこの家を守ってきたのよ。たった月50万円ぽっちでいばらないでちょうだい。誰からも羨ましがられるような生活が…工事が海外へ行って私には自由と金が手に入ったのよ。それを使って何が悪いの?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが完全に切れた。この女は、自分の息子の家族を飢えさせておいて、何を言っているんだ。
「…いいだろう。なら、こっちにも考えがある」
俺はスマホを取り出し、ある電話番号を押した。母はまだ、自分が何をしたのか理解していないようだった。いや、理解しようとしていないんだ。俺はこれから、この母親を完全に追い詰める。3年間の仕返しを、思い知らせてやる。
CONTENT: ドイツから帰国した瞬間、待っていたのは貧困に疲れ果てた家族と、消えた1800万円の真実だった。母の一言が、俺の復讐の始まりを告げた。



