息子の結婚式の朝、私は控え室で緊張していた。彼が「母さん、ありがとう。仕送りはもうやめなくていいんだ」と言った瞬間、突然、初めて会った嫁が、私を車椅子から見下ろして怒鳴った。「障害者のくせに、息子にたかって!…

息子の結婚式の朝、私は控え室で緊張していた。彼が「母さん、ありがとう。仕送りはもうやめなくていいんだ」と言った瞬間、突然、初めて会った嫁が、私を車椅子から見下ろして怒鳴った。「障害者のくせに、息子にたかって!...

息子の結婚式の朝、私は控え室で震える手を握りしめていた。障害を持つ私、片桐よ子は車椅子で式に臨む。ようやく息子の洋一が立派に成長し、結婚する日が来たのだ。彼が私のところへ来て言った。「母さん、本当に今日まで育ててくれてありがとう。お父さんが亡くなってから、女で一つで俺を育てるのは大変だったろう。絵本を書いてくれたこと、今でも覚えてるよ。大学まで出してもらって、全部母さんのおかげだ。」私は泣きそうになりながら言った。「お礼を言うのは私の方よ。洋一がいたから頑張れたの。これからはゆりさんと幸せにね。毎月20万円の仕送りも、もうしなくていいのよ。二人のために使いなさい。」すると、その言葉を聞いた瞬間、嫁のゆりが鬼の形相で割って入った。「ちょっと、どういうこと? 仕送り? 冗談じゃないわよ。結婚したら洋一さんの稼ぎは私のものでもあるんですからね。これ以上、洋一さんにたかるのはやめてもらえます? 年金暮らしで、ねたきりのあんたなんか、何の役にも立たないゴミじゃない? 障害者だからって、子供のお金を当てにするなんて、随分図々しいんじゃない? まるで寄生中だわ。」ゆりの隣にいた見知らぬ年配の女性も、私を睨みつけて口を挟んだ。「そうですよ。私はまだ働けますし、将来、子育ても手伝えます。でも、あなたは何もできないでしょう? 同じ母親として、品性を疑いますわ。」私は言葉を失い、何も言い返せなかった。だが、洋一が私をかばって立ち上がり、静かに、しかし力強く言った。「ちょっと何か勘違いしてるようだな。母は今でも現役の仕事人だ。稼ぎは僕の何倍もある。」嫁とその母は嘲笑った。「嘘をつかないで。こんな体の不自由なババアが働けるわけないでしょ。」「嘘じゃないよ。実は母は有名な絵本作家なんだ。このマンションだって、母が一括で買ってくれた。俺の仕送りは、その返済なんだよ。」私は絵本作家として成功し、月収は250万円ほどあった。下半身は不自由でも、上半身は動く。在宅で仕事ができていたのだ。それを聞いた瞬間、二人の態度は一変した。「あら、やだ。お母さん、そんなに稼いでいらっしゃったなんて。私たちシングルマザー同士、仲良くしましょうよ。」しかし、洋一の決意は固かった。「申し訳ないけど、この結婚は考え直させてほしい。君は同じ母子家庭で育ったから、苦労して育ててくれた親に感謝する気持ちも、俺と同じだと思ってた。でも、それは君の母親だけの話で、俺の母にはそう思っていないって、よく分かった。俺が結婚する相手は、自分の両親だけでなく、俺の母も大事にしてくれる人じゃないとダメなんだ。」この言葉に、ゆりとその母親は掴みかからんばかりに取り乱した。結局、結婚式は中止になった。多額のキャンセル料が発生したが、その費用は洋一とゆりで半分ずつ払ったという。式場での騒動は会社中に広まり、二人は同じ職場だったため、気まずくなったゆりは会社を去った。そんな中、半年後、洋一は新しい彼女を連れてきた。今度の彼女は、ゆりと違い、落ち着いていて奥ゆかしい女性だった。私は、絵本に障害を持った子を登場させている。障害があっても引け目を感じず、差別のない世界を願って。夫に先立たれ、体も不自由になり、運命を呪わなかったと言えば嘘になる。それでも、こんなにも思ってくれる息子がいて、私はこの上なく幸せだ。

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